遠くて近い、貴方の存在。

きっかけ





―――――――…



その日私はライブが終わった後
人生で初めて『出待ち』という行為をする事に決めた。



会場から出て一人でいると、
何人かの人達も同じ目的なのかうろうろしていた。



そして…



『お疲れさまでしたー』
『じゃあまたな。今日も楽しかったぜーっ』



裏方の出口から、ヴォーカルの貴之とギターの李狗が出てきて。




私の心拍数が一気に上がった。






周りにいたファンの子たちが、
一気に貴之と李狗の周りに集まり始める。






『貴之、今日もお疲れさま!』
『李狗、これ差し入れです!時間がある時にでも…』







真っ先に二人の元へ向かった子たちは、出待ちの常連なんだろう。
貴之と李狗も、まるで知り合いと話しているかのように気楽だ。






もちろん私も貴之と李狗と話したかったけど、
緊張のせいなのか、足が動かなかった。






そして、その時…







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