この世界は残酷なほど美しい


母さんが日記を書いていたなんて知らなくて。
僕はそれを見たこともない。
きっと父さんも知らないはずだ。
病室を整理したのは看護師さんだったし、そこからは日記なんて出てこなかった。
じゃあそれは今どこにあるのだろう?
母さんはそれに何を書いていたのだろう?




「流星…知らなかったのか?」



「全然…そんなこと今日初めて聞かされたよ。母さんの日記…どこにあるんだろう…」




「てっきり流星が持って行ったのかと思った。じゃあ雅が持ってるんじゃないのか?」




すると春さんの携帯が鳴り出した。
慌てて春さんはそれに出る。
どうやら呼び出しされたみたいだ。
看護師は休める時間が無く忙しい職種だなと思った。
休みたいばかりの僕には向いていないだろう。




「流星、とりあえず行くな?また遊びに行くから。久しぶりに美羽にも逢いたいし」




そう言って春さんは僕の頭をぽんっと触り急ぐように僕の前から姿を消した。



そこにぽつんと残された僕はしばらく何も行動したくなくなった。



母さん、僕はまだ青虫だから…

未熟な青虫だから。



母さんが残していった本当の想いを知ることができないの?





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