この世界は残酷なほど美しい
僕は勝手に思い込んでいただけなのかもしれない。
本当は父さんは母さんのことを一番に想っていて愛していたのだ。
だけど何故あの時病院に来なかったのだろう。
やはりそれが引っかかっていて今目の前にいる父さんが偽物なんじゃないのかとさえ思ってしまう。
僕は何も触れることなく、そっとドアを閉めた。
ぱたん、と閉まった音を聞いた瞬間、ようやく息を吐き出すことが出来た。
「父さん…どうして…」
目に映る世界を信じるしかなくて。
でも目に映らないところでも世界は着々と進んでいて。
僕は少しだけパニックになる。
何かが僕に欠けている。
僕は僕自身の世界を信じすぎていた。
慌てて携帯を取り出し、着信履歴を出す。
最終着信をしたのは蓮だった。僕は蓮の番号を押して電話を掛ける。
『ふぁい?』
聞こえてきたのは寝ぼけ声の蓮。
僕は蓮を起こすように大きな声を出す。
「蓮!今蓮の親父さん家にいるか?聞きたいことがあるんだ!!」
僕は僕の知らない世界を見てみたいと強く思った。