この世界は残酷なほど美しい
見つけたよ。
母さんの日記。
あんなの残すなんて卑怯だよ。母さんに逢いたくなったじゃん。
僕は花束を母さんのお墓の前に置いた。
線香の落ち着く香りがまた鼻を刺激する。
でも今回はくしゃみは出なかった。
「もう10年だね…」
僕が呟くと父さんは立ち上がりお墓に手を当てた。
「10年…長かったなぁ。結婚生活を抜いちゃったな。」
お墓を触る父さんの手からは愛情が溢れている。
僕はカバンの中から母さんの日記を取り出した。
「これ、母さんの日記。」
「え?」
「僕はこれを読んで良かったって思ってる。今までごめん…父さん。ずっと誤解してたんだ。」
「流星……」
僕は星柄のハイカットシューズに視線を向ける。
言わなくちゃいけないことがあるんだ。
今まで僕は何をしていたのだろう。
恥ずかしいよ、こんな自分。
「父さん…僕は父さんと母さんに愛されて幸せだよ」