この世界は残酷なほど美しい


顔を洗って支度をする。
リビングに行くとテーブルの上には父さんが残していった写真たちが置いてあった。

僕はそれを一枚取る。
カメラに向かって眩しく笑うアジアの少女。
父さんの撮る写真は笑顔とか、人間が多かった。


知らない人間に笑顔を向けるなんて一瞬のうちに出来るはずがない。
だけど父さんはそれをやってしまう。
人柄なのか、生まれ持った能力なのか、そういう部分は少し尊敬する。



「…でも僕は許さないよ」




僕は誓ったんだ。
母さんが死んだ日。
父さんを恨み続けるって。




軽く朝食をし、学ランに着替えた。
ちょうどその時、インターホンが鳴った。
きっと蓮が迎えに来たのだろう。

鞄を持ち、家を出た。



「あっ忘れるとこだった」




僕は母さんの部屋に向かい、仏壇の前に座る。




「行ってきます!」




マンションのロビーに行くと蓮が携帯をいじっていた。
相変わらず明るく抜けた髪の毛だな、と思いながら蓮に近寄った。




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