俺様王子の秘密
「あんた、名前は?」

「へ?」

いきなりの質問に、思わず声が裏返る。
あわてて口を押さえるあたしを見て、彼はまた口を押さえて肩を震わせた。

テーブルから降りると、彼はあたしの目の前に来て言った。

「だーかーらー、名前。あんた、新入生でしょ?」
「あ……緩奈、です」

「緩奈……いい名前じゃん」

悠斗は、そう言って笑った。

なんだ。こいつ、こんな顔して笑うんだ。

笑って細くなった瞳も、口角の上がった唇も、そのすべてが可愛い。なんて罪な顔をしてるんだろう、こいつは。

改めて、こいつにキスされたことを自覚する。

「って言うか、あんた先輩? それより、あたしの質問1個も答えてもらってないんだけど」

「答えその1、俺は先輩じゃない。俺もあんたと同じ、新入生。答えその2、俺がここでキスしてたのは、ただ単に暇だったから。ってか、俺じゃなくてあいつからキスしてってせがんで来たんだし。そこ重要」

彼はまた水を口に流し込みながら、1つ1つ答えていく。なんだ、覚えてんじゃん。
って言うか、キスの件に関してはあっちからだったの? どう見てもあんたからじゃ……。

そう言いたい気持ちをぐっと我慢する。

「答え3、俺があんたにキスしたのは、キスしたかったから」

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