傘に、手錠をかけてみる。
非通知。
プライバシーだなんだと繰り返されるこのご時勢、私の今していることは個人情報保護法にひっかかるのか、否か。

まぁ、そんなことを一々考えていたらどんな善意もすべて犯罪とされてしまうからどうなのかとも思うのだけれど、やっぱり私がチキンなせいなのかそんなどうでもいいことが気になってしまう。

ふぅ、とため息を一つ零すと、私は返信用のメールを作成した。

≪わかりました、じゃぁ明日の夕方5時、須川駅の近くで。 鶴橋 智≫

絵文字も顔文字もないその文面に、女らしさという欠片はどこにも見当たらない。我ながら自嘲的な笑いがこみ上げてくるほどに。

思わずほぼ日常的に友人の千絵からの説教が頭の中に浮かんできて、頭をポリポリとかいた。

―いや、でも…そういう色めきたったものでもないし、別にいいよなぁ、コレで。


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