明日が欲しい




1年生の3学期に入ると,演劇のコンクールが近ずいている木村さんは,毎日遅くまで練習をしていた。


なんでも準主役を手に入れたとかで,プレッシャーに負けない様にと必死で稽古している。


僕は彼女の練習が終わるまで体育館のすみでボーっとしていた。


その時であった。


いきなり彼女が貧血で倒れたのは。


僕は慌てて彼女の傍に行き,


『どしたん!大丈夫か?香織!聞こえるか!』


と必死で叫んだ。


少し経ってから,


『何慌てとるん。

大げさやで。

ちょっとめまいがしただけやのに。

最近稽古がきつかったから疲れとるだけや。

心配せえへんでもええよ。』


って笑ったから少し安心した僕は,演劇部の部長さんにいって取り合えず連れて帰ることにした。


『香織!本当に大丈夫か?

しんどかったらすぐ言えよ。

僕がおぶってやるけんな。』


と一人前の事を言うと

『おぶってなんかいれへん。

うちは本当に何とも無いから。

心配性やね。』


と、けろっとして言われるとちょっと安心して来た。


二年生になり新学期も始まり,平穏な日が続いた。


元気な彼女が貧血で倒れたのはそれから三ヶ月後の夏休み前の学期末テストが終わった次の日である。


僕と試験休みを利用して栗林公園でデートをしている時である。


いきなり座りこんだ彼女が,


『ちょっとしんどいねん。

歩きつかれたから休もう。』


とベンチに腰掛けてすぐ眠ってしまったみたいにぐったりしたのだ。



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