天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(後編)
「何!?」

蹴りを放ったと思った瞬間、九鬼はこうを描くように、空に舞い…背中から、地面に激突した。

その衝撃で眼鏡が取れ、乙女シルバーから、学生服姿に戻った。

「ムーンエナジーが通用しない」

空を見上げながら、唖然として呟いた九鬼を、天使はせせら笑った。

「月の光が、我々にきくものか!」

女の姿をした天使は、バストを上に突き上げながら、ゆっくりと近付いていく。

「真弓!」

駆けつけようとするカレンの前に、もう1人の天使が舞い降りた。

「どこにいくつもり?」

「チッ」

笑顔を向ける天使を見て、カレンは舌打ちした。

2人の天使は、絶世の美女ではあったが…あらゆるパーツが同じな為に、分身にしか見えなかった。

「お前は、普通の人間のようだが…どうして、我々に魂を吸収されなかった?」

天使の言葉に、カレンはちらっと一瞬だけ、周りを確認した。

眠っているかのように、地面に倒れている数百人の人々。

外傷はないが、みんな…死んでいた。

「咎人から召喚され、人の魂を奪うことで、我々は使命を実行する」

天使の言葉に、カレンは眉を寄せ、胸にかけているペンダントに手をかけた。

「使命とはなんだ!」

ペンダントにはめ込まれている赤い碑石から、針のように細い剣が飛び出して来た。

「ほお〜」

天使は、ピュアハートを見て、目を細め感心したように頷いた。

「お前達の目的を言え!」

カレンはピュアハートを突きだした体勢で、ジャンプした。

「そんなもので、我々を」

天使はかわすことなく、ピュアハートの突きを受け止めた。

ピュアハートは、天使の胸から背中などを貫いたが、それだけであった。

カレンはピュアハートを抜くと、後方に飛び、距離を取った。

「フッ」

天使は笑うと、傷口に指を触れ、カレンを見た。

「斬るや刺すだけの武器に、我々は倒せない」

「そうか?」

今度は、カレンが笑った。

ピュアハートを上に、突き上げると、こう叫んだ。

「モード・チェンジ!」

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