天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(後編)
「暗いね」

そう言って微笑んだヤーンは、部屋の電気をつけた。

その瞬間、幾多はもっと驚いた。

特殊部隊というからには、兵士だと思っていたが、まったく違った。

一般人であった。

ただし…三角座りで、目を充血させ、ぶつぶつと文句を言う者、涎を足らしている者…。男の写真に、釘を打ち込んでいる女など、数10人がいた。

「彼らは、戦士ではない。僕の闇に力を補充する為に、ここにいるのさ」

ヤーンは両手を広げ、部屋に入った。

すると、ヤーンの指先から伸びた気のような闇の糸が、部屋中の人間に絡みついた。

「嫉妬、妬み…恨みなど、ここにいるもの達は、ある一線を越えた人々だ」

糸が一瞬で、太くなった。

「な、何が進化だ!何が未来だ!」

部屋に入った幾多は、隠し持っていたナイフで、糸を切り裂いた。

「わからないのかい?」

ヤーンは笑うと、幾多の方に顔を向けた。

「多くの人間は糧となり、一部の人間が進化する。人は多過ぎるよ」

「く」

幾多は、顔をしかめた。

「未来とはね。すべての人にないんだよ」

ヤーンは、満面の笑みを浮かべた。

「く!」

幾多はヤーンよりも、2人に無関心な周りの人間にも嫌悪感を覚えていた。





「うう…」

とある牢の中で、全身を繋がれたジャスティン・ゲイが呻いていた。

傷だらけの体であるが、修行だと思えば我慢できた。

しかしー。

「人々を助けなければ…」

ジャスティンは、それだけを考えていた。

しかし、脱獄した瞬間、人質は殺される。

その葛藤だけが、ジャスティンを苦しめていた。

「すまない」

ジャスティンは、頭を垂れた。

そして、いつまで続くかわからない静寂と痛みの中に身を沈めた。
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