天空のエトランゼ〜レクイエム編〜(後編)
「恐らく…」

海をぐるっと北上して、足摺岬から上陸したアルテミアは、すぐさま…俺へと変わった。

赤星浩一の分身である俺だが、見た目は違った。

実世界で名乗ったように、綾瀬太陽というでいこうと決めていた。

岬に立つ灯台を尻目に、俺は…防衛軍本部を目指すことにした。

「ふう〜」

息を吐いてから、俺は全身の体を抜き、ほんの少し…魔力を発動させた。

さすがは、ブルーワールドである。実世界とは違い、空間の崩壊を気にすることはない。

「赤星」

アルテミアのたしなめる声がした。

崩壊はしないが、強力な魔力は、防衛軍や魔神達に気づかれる可能性があったからである。

「わかっている」

俺は、ブラックカードを取り出すと、すぐにその場からテレポートした。

そして、防衛軍本部まで一瞬で移動した俺は、建物の造りを見て、顔をしかめた。

何故ならば、原発施設のように見たからである。

(人がいるようには、見えないな)

俺はカードを取りだし、四国における本部の位置関係を確認した俺は、目を丸くした。

(実世界の高知空港辺りか?)

ブルーワールドと実世界は、リンクしていることいえ、実際は大きく違う。

テレポートや、個人での移動手段が多いブルーワールドには、空港はない。

戦闘機は存在するが、民間人を乗せる旅客機はない。

基本的に、ドラゴンなどの魔物が飛び回っているからである。

その為、民間人が移動する時は、大量のポイントを消費し、テレポートアウト後のトラブル心配のあるテレポートよりも、車や防衛軍が確保した海路を船で行くことが多かった。

空間認知能力があれば、個人でも安全にテレポートができるが、そこまでの能力がある人間は少なかった。

民間人は使えないが、各地域にある防衛軍の施設内を繋げたテレポート専用の空間がある。そこを使えば、世界中を行き来できるが、数十人しかテレポートできないことから、優秀な戦士や司令官クラスしか使用を許されてはいなかった。



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