迷い猫
「...普通にクロでいいんじゃない?」
“クロ”なんて名前
ありきたり過ぎるかな?
「おー、いいじゃんクロ!
覚えやすいし、お前にピッタリだな」
「ミャー」
「今日からお前はクロなっ♪」
アオはクロを抱き上げている。
その姿に何だか妬けた。
相手は黒猫。
しかも子猫。
だけど、私も黒猫。
しかも子供。
猫相手に妬くなんて
馬鹿みたいだと、自分でも思う。
だけど
私はオモチャを取り上げられたような
そんな感覚に襲われた。
あの日を思い出す。
忘れたくても迷彩に残っている残像。
きっと私の記憶から
消えてくれる気なんて無いのだろう。
----私は李桜だよ。
ちゃんと、私を見てよ。