僕のミューズ


…「芹梨ちゃんは、遥のミューズだな」

新しいスタイル画を皆に披露した集まりの帰り。
皆で居酒屋で盛り上がっている時に、紺が小さく笑って言った。

「…ミューズか」
「いい意味で捉えろよ。それだけお前と波長が合うんだよ」

そう言われると、素直に嬉しい。
照れを隠す為にハイボールをぐっと飲んだ。


ミューズ。
イメージを具現化するモデル。デザイナーにとって、欠かせない存在。

別にデザイナーになるわけではないが、俺にとっての芹梨は、確かにその位置に限りなく近いと思う。

着せ替え人形とはまた違う。
彼女がいるから、俺の中から新しい何かが生まれるんだ。

それはデザイン然り、気持ちの面、然り。

「じゃー今回のショーは楽だな。モデル、もういるわけだし」

話を聞いていた真二が嬉しそうに言った。
モデルの調達はなかなか手間のかかる仕事だからだ。

「いや、芹梨が歩くって決まってねぇし」
「遥は芹梨ちゃんをイメージしてこの素晴らしいデザイン画を描いたんだろ?芹梨ちゃんが着るのが一番!頼んどいてなぁ」

既に酔っているのか、テンションの高い真二は笑いながら言う。

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