僕のミューズ
信号の前、水に浸かったのかと思うくらい濡れている俺は、走った息を整えながら「くそっ」と小さく吐いた。
芹梨の今の気持ちが、わからない。
それは、俺の気持ちを何も伝えていないから。
濡れて何も読めなくなった紙をぐっと握る。
そのま雨に吸い込まれるかの様に、俺は天を仰いだ。
痛い程の雨粒が、全身を襲う。
息ができない程の雨。
その苦しさに比例するかの様に、胸の痛みが広がっていく。
芹梨に会いたい。
会いたい。
今すぐに会いたい。
…ただ苦しい程に、芹梨に会いたい。