BACK
BACK 3

狭い車の中は二人の熱気で雲っている。


やはり、この後に残されているのはただの虚無感だ。


私の携帯がさっきから鳴っている。

きっと、家にいない私を心配してお母さんがかけてきてる。


もしかしたら、順一かもしれない。


出たくなかった。誰であろうと邪魔してほしくなかった。


私と稔はこれからの虚無感に堪えるため、少しも隙間を開けずに抱き合っていた。


「ごめん。」


謝らないでよ。稔が望んだ事を私も望んだだけ…


「ううん…。私だって…」


そして、埋められたかのように見えた二人の距離はまた、離れる。

幻想だった…、幻想にしなきゃいけない


静かに服を着直し、車が再び元来た道を戻っていく。

ビデオテープを巻き戻すように、稔との出来事を巻き戻す。

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