夜をすり抜けて

バスンッと、荷台の下から樹が何か投げてきた。


いつのまにかそれを取りに行ってたみたい。



「それ、着とけ」


グレーのスェットスーツ。


「夜通し走るから、そっちの方が楽チンだろ」


「あ、うん」


「制服とか…ちょっとマズイんだよ」


きまり悪そうに樹が言う。


「何で?」


「家出少女を連れ回してるテイで、人々の視線がマジ痛いんだわ。
しかも本物の家出少女だぜ」


ありえねーし、なんてボヤきながら、彼はコンテナの扉を片方だけガチッと閉めてどっかへ行ってしまった。



えっと…ここで着換えろってことだ。


扉の影に出来た暗闇で、パパッと急いで着替えてみる。


わ、ブカブカ…




そのスェットはわたしの体には大きくて


…男の人の整髪料の匂いがした。


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