とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~




「あの日…ユーリに助けてもらった時、俺…ここに居たらしいんだ。」



ズタズタに切り裂かれた背中の傷がかなり酷かったとユーリは言っていた。



「…背中の傷…」



「…宿屋でもそれに反応したね。知ってんだろ?俺の傷がなんで出来たか…」


右京は忍の呟きにそう言うと上半身を起こした。



忍は手の甲を目の上に置いて表情を隠した。



「…なんで隠すの?」



「…隠してんじゃないよ…きっと今の右京じゃ言っても信じてくれないから…」



右京は忍の腕を乱暴に掴み苛立ちを露にした。



今にも泣き出しそうな忍を真上から見下ろす。




「…何でそんな顔すんだよ…」



何も答えない忍を見つめると彼女の目から涙が溢れ落ちる。



右京はまるで胸が鷲掴みされたように痛んだ。




優しくその滴を指ですくう。



「…なんで泣くの…?」



「悔しいの…私…何も出来なかったから…あの時…」



─あの時…?



何かを思い出しかけたと同時に背中に激痛が走った。



─記憶がちらつく…




「右京…あなたは多分思い出したくないのよ…」



このまま記憶を無くしたままなら人間として生きていける。



だけど…






─それじゃ何も解決しない─




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