とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
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布団に入ってもミーシャはなかなか寝れなかった。
期待はずれだったウキョウの言葉がちらつく。
吸い込まれそうな澄んだ深いグリーンアイが優しかった。
細い目を更に細くして囁くように言った台詞は“きれい”や“かわいい”とか、その類いの言葉ではなかった。
…面白いって何!?
明らかに誉め言葉じゃないし、笑いを狙った訳でもない。
ミーシャはモヤモヤしながら目を閉じた。
眉間にウキョウの指の感触を思い出し、何故かドクンッと鼓動が早くなるのがわかった。
『…寝れない…』
いちいちウキョウの顔を思い出し、心拍数があがる。
もう!なんなのよ…
これじゃまるで…
…まるで…なに?
一瞬頭を過った考えにミーシャはひとり恥ずかしくなった。
第一、記憶がないとはいえウキョウにだって恋人が居るかもしれないじゃない!!
あのルックスとあの性格で居ない方がおかしい。
いずれ記憶が戻れば彼はここを去る人なのだ。
『…そうよ…居ない方がおかしいのよ…』
自分に言い聞かせるように小さな声で独り言を呟く。
だがミーシャは言葉にしてしまうと急に寂しくなった。
胸を締め付けられたみたいに苦しさを感じる。
ミーシャはモゾモゾと身を小さくしてそれに耐えながら眠りについた。
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