とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
小さく唸って自分の身体を抱く様に項垂れるウキョウにコーディが気付いた。
『ウキョウ!?だ…大丈夫!?』
『ッ…!…大丈夫だよ…』
全然大丈夫そうじゃないウキョウをコーディは心配そうに覗き込んだ。
『背中…?傷が痛いの?』
『…すぐ治まる…』
荒い呼吸をなんとか整えて激痛をやり過ごす。
司祭の説教に紛れて外から甲高い鳴き声が聞こえた。
それを聞くとウキョウの脳裏に教会の記憶が一気に溢れ出した。
『…キリストは哀れな人間だ…』
『…ウキョウ?』
『大丈夫。治まったよ…』
顔色も元に戻ったウキョウを見てコーディがホッと胸を撫で下ろした。
『ちょっと外の空気を吸って来る。…すぐ戻るよ…』
そう言って静かに教会の外へと逃げ出した。
ウキョウは教会の壁にもたれてズルズルと座り込んだ。
空に旋回する鷲が見えた。
ウキョウが口笛を吹くと鷲が高度を下げた。
『バージ…おいで…』
ウキョウの声が聞こえたのか、バージはゆっくり彼の腕に舞い降りた。
そしてバサバサと地面へと降りるとピュィと可愛く鳴いた。
それにウキョウは小さく微笑むとバージを撫でた。