とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
大学に籍はあったものの、半年近く休学してしまったせいで寮はすでに引き払っていた。
同室だったアランは「少し待ってれば?」と右京に言った。
「今のルームメイトもそろそろ限界のはずだよ?」
眼鏡の奥で目を細めてそう言った。
「なんで?」と聞かなくても想像がつく。
『…彼奴ら何やらかしたんだ?』
『クロウの時と大差ないよ。ただ“リアクションがつまらない”って嘆いてたよ。』
アランにも『同室はクロウがいい』と言われ右京は『考えておく』と答えた。
自分としてはどちらでも構わないのだが、やはり寮だと都合が悪い事も多々ある。
それはバージの事だったり、自分の事だったり…
アランの様に上手く立ち回れたら楽なんだろうが、右京にはその自信が無かった。
何より、自分をフォローしてくれる“虎太郎”がいない。
虎太郎の存在が自分にとってこんなにも大きかった事実に驚く。
本人が聞いたら泣いて喜ぶだろうから絶対に言ってやらないけど…。
虎太郎にはハニエルとしての“役目”がある。
…といっても元々はウリエルであった右京の役目だったのだが…
つまりはそんな事までも自分のフォローをしてくれているのだ。
感謝してもしきれないくらいだ。
…本人には絶対言ってやらないけど…。