とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
村に着いて辺りが異様に静かな事に違和感を感じた。
誰も居ない…?
クリスは一軒一軒家を見て回った。
居ない…誰も居ない…!
嫌な予感がしてならない。
『母さん!…居ないの!?』
自宅の玄関でそう叫ぶが返事がない。
─教会は!?
クリスは教会に向かって走り出した。
だがその途中、視線を感じた。
クリスは足を止め辺りに注意を配る。
銃を構え辺りの空気の流れを読む。
グレイに教わった通り身体全体の精神を研ぎ澄ます。
微かに誰かの息づかいが聞こえた。
『…誰か居るのか!?』
『クリスか!?』
『…グレイ…!?ああ…なんてザマだよ…どうしたんだ!』
傷だらけのグレイに駆け寄ると彼は力なく笑った。
『お前に“情を挟むな。”と言っておきながらこの有り様だよ…』
『喋るな!死ぬぞ!?』
深い切傷を負った彼は明らかに出血多量だった。
『…くっそ…!止まらない!』
『クリス…“クドラク”だ。“クドラク”が居た…』
『…なんだって?』
グレイの言葉に辺りを見渡す。