とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~




村に着いて辺りが異様に静かな事に違和感を感じた。



誰も居ない…?




クリスは一軒一軒家を見て回った。




居ない…誰も居ない…!



嫌な予感がしてならない。




『母さん!…居ないの!?』




自宅の玄関でそう叫ぶが返事がない。




─教会は!?




クリスは教会に向かって走り出した。




だがその途中、視線を感じた。




クリスは足を止め辺りに注意を配る。




銃を構え辺りの空気の流れを読む。




グレイに教わった通り身体全体の精神を研ぎ澄ます。




微かに誰かの息づかいが聞こえた。




『…誰か居るのか!?』



『クリスか!?』



『…グレイ…!?ああ…なんてザマだよ…どうしたんだ!』




傷だらけのグレイに駆け寄ると彼は力なく笑った。




『お前に“情を挟むな。”と言っておきながらこの有り様だよ…』



『喋るな!死ぬぞ!?』




深い切傷を負った彼は明らかに出血多量だった。



『…くっそ…!止まらない!』



『クリス…“クドラク”だ。“クドラク”が居た…』



『…なんだって?』




グレイの言葉に辺りを見渡す。



< 227 / 461 >

この作品をシェア

pagetop