とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~

アルカディア




   ◇◇◇◇◇◇◇◇



右京と忍がアパートに戻って来たのは日が西に傾き始めた夕方だった。




鍵を取り出し部屋を開けようとして、施錠が外れている事に気付いた。




「…もう帰って来やがったか…」




誰と聞かなくても判るその人物に忍も同時に溜め息をついた。




『待ってたよ、ハニー!』




両手を広げて忍にハグをするニックを右京がすかさず引き剥がす。




『早かったな…手に入ったのか?』




『完璧だよ。ロイから最新型の小型カメラを借りたからね。』




彼はそのカメラでヴォイニッチ手稿を一ページずつ画像に収めたらしい。




『単調作業で肩が凝ったよ。』




『ご苦労様でした。コーヒー入れますね。』




そう言う忍に『甘くしてね~』なんて注文を付ける。




『そっちは?』




『リッチフィールドに行って来た。』




『庭園は入れないだろ?』




『入れないさ!…うちのじゃじゃ馬が言うこと聞かないから…』




キッチンから『聞こえてるわよ!』と言われて右京はわざとらしく首を竦めた。




『ハハハ!想像つくよ。…で?デートして来たの?』




『マンチェスター大聖堂に寄って来た。』




ニックは『なるほど』と頷きながら忍からマグカップを受け取った。




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