とある堕天使のモノガタリⅢ
~ARCADIA~
マスコミの車が目に入る。
バフォメットに視線を戻すと闇に紛れ、やがて姿を消した。
─くっそ…!
意外と逃げ足の早いバフォメットに舌打ちをする。
近付いてくるマスコミの白いワゴン車を見据えながらインカムのスイッチを入れた。
『逃げられた。』
『発信器は動いてる。上出来だ。』
『ついでに問題が起きた。…今目の前にマスコミのワゴン車がある。』
右京の言葉に一拍おいてアランの声が聞こえた。
『…撮影されてる可能性がある。ワゴン車に積んである機器を破壊してから帰還しろ。』
『…ラジャー。』
そう答えたものの、どうするか悩みながら腰のグレネードに手を当てる。
『…き…君!!さっき怪物に襲われたのは君!?』
ワゴン車から降りてきたのは興奮気味の女とカメラマンだった。
『いや…気のせいだろ。』
涼しい顔してそう答えてみたが、汚れて真っ黒な右京の服を見れば一目瞭然である。
『…あんたら…二人だけ?』
『え?…ええ、そうよ。話を…』
銀色の長い前髪に指を通して払う右京にリポーターの女が目を奪われた。
その様子に右京は『良かった』と微笑むとグレネードのピン抜いた。