とある堕天使のモノガタリⅢ ~ARCADIA~



「…な…に…?」




あまりにも突然の出来事で、呆然と立ち尽くす。



へなへなとその場に座り込むと、頬を伝う雫に気付いた。




…私…泣いてるの…?




頬に手をあてて涙を拭った。




…涙の理由は何…?




ニコールの優しさ?




違う…そうじゃない。





忍は涙の理由に気付いた。




それは“恋しさ”…




ニコールのくれた優しさで、右京を恋しく思っていたのに気付いて涙が出たのだ。




「…会いたいよ…右京…」




…貴方は…何処に居るの?




その後、布団に入ってもまた寝付けなかった。



でもそれは嵐のせいではない事も判っていた。



その証拠に、さっきまであんなに怖かったカミナリにさえ気付かなかった。



こんな時いつもなら潤が出てくるのに、今日に限って出てこない。




「…薄情だなぁ…」




まぁ、出てきても怒られるのだろうけど…




とりあえず忍は目を閉じて眠ったフリをして自分を誤魔化すのだった。




   ◇◇◇◇◇◇◇◇




< 76 / 461 >

この作品をシェア

pagetop