グリーンライダー
　「のわっ！」っという、少し裏返った声を上げてしまった。
　こんなに驚いたのは、小学生低学年の頃雨の日に長靴を履いたら蜜蜂が入っていて刺された時以来だ。
　裸足の俺の足底に、チクチクという感触が伝わる。
　薄ぼんやりとした月明りの下、俺は足元を見た。
　２、３cmの短い草が辺り一面を覆っている。
　草原のようだ。と頭で考えていた俺は、〝はっ〟と気がついて月を見上げる。
　半月より少しだけ大きい月が、俺を見下ろしていた。

　月が見えるっとことは、ここは外ってことだよな？という、当たり前の自問自答を続けていた俺は、こういう状況下において一般人(俺を含む)が辿り着く当たり前の結論に落ち着いた。
　夢だ眠ろう。
　非日常を求めても、実際はこんなものである。
　俺はベッドに入り、眠りに着いた。

　閉じた瞼を通して感じる光で、俺は目を覚ます。
　風に乗って運ばれてくる草木の匂いが、俺を郷愁の念へと駆り立てる。
　だが、状況が変わってないことに気付いた俺は二度寝をする。

「のわっ！」
　俺は思わずそう悲鳴を上げた。
　実に情けない。
　こんなに驚いたのは、幼稚園生の頃に溝にはまった時以来である。
　急に感じる浮遊感ほど、心臓に悪いものはない。
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表紙・目次

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