チェリーガール
「目を見たら石になるって魔物。人間じゃないよ。魔物だったんだ。普通じゃないよ。笑わないし。私、ビビッて息ができなくなったもん。残念だけど、碧君はバケモンだよ」


そう言い張るのは、たまきだった。


そんなわけ……ない……って……。


「……。今の何……? 私の脳の思考がフリーズして停止状態になったんだけど?」


さすがのすだちも動揺してる。


「あいつ、まだ固まってる。ぷっ。ウケる~♪ 意外と、弱虫じゃん。腰抜けてんじゃない?」


金髪の男を見てたまきが嘲笑する。


「嘲笑を浴びせる者はいずれ嘲笑の的になるんだよ。」


すだちがクールに言い放つ。


おー、かっこいい。



「さあ、それじゃあ裏口に行こう!」



たまきの言葉を皮切りに、気を取り直して私たち一行は裏口へ進んだ。



ガチャッ!!



裏口のドアを開けると、螺旋階段の踊り場がある。


ここは、どうやら非常階段みたい。



私は手すりに顔の額を当てる。


ひんやりして気持ちいい。


少し、ここで休みたい。


「ごめん。休憩させて。顔熱いから冷やしたいんだ」


二人は何も言わず、狭い踊り場に佇んだ。


すだちは夜空を眺めて、たまきは携帯でメールを打つ。


すだちが見ている空を私も見上げた。



ビルと民家が建ち並んでいて夜空は遮られているけど、月は見える。


今夜は三日月だ。


微風が吹いていて、それがとても心地良い。


私は、復活した。




< 42 / 202 >

この作品をシェア

pagetop