となりの女の子

となりのあいつ

頭の回転の早い高見優菜は、やはり勉強もできる女だった。


授業中、寛太が指された問いへの応答の半分以上は、隣の席の優菜に援護してもらったものと言っても過言ではない。

おかげで寛太は、それまで解らないまま見過ごしてきた悪い習慣を改善することができていた。


そんなことを続けながら中間テストが近づいたある日、

「はい、これ。」

寛太にノートを手渡す優菜。


「ん？…何じゃコレ？」

それは、各教科のテスト範囲の内容が解りやすくキレイにまとめられた、ただ頭にたたき込めばよいと言わんばかりの代物だった。


「ほー。なるほど…」

そして、ソレを頼りに必死に机に向かった寛太は、見事、いまだかつてない成績をたたきだしてみせた。


「やればデキルんじゃん。」

「まぁな。」

「…一夜漬けの暗記じゃダメなんだよ。」

「わかってるよ。」

「夏が終わったら受験が」

「うるせーなー。おまえに言われなくても分かってるって！」

「あーそー！そーゆー態度とるんだぁ！じゃあ、もうノートも見せないし、教えない！」

「ふっ、俺様は野球で高校に進むから、勉強なんて程々にしてれば良いんだよ！」

「そんなこと言って！」

「おまえは自分の心配してろっつーの。」

「はあ？」

「颯太、男子校行くらしいぜ。」

「あ…う、うん。知ってる。」

「…ま、俺が口挟むことじゃねぇけどな。」

「そうだよ…」


颯太との仲を勘違している寛太の目には、ただただ優菜が哀れに映り…


「なぁ高見、本当にコレで良いのか？」

颯太からも哀れに思われている優菜であった。