鉄の救世主(くろがねのメシア)
午前五時。

「ん…」

寝心地の良くない体育館の床の上で毛布だけかけて眠っていた中学生の少女が目を覚ます。

熟睡は出来なかった。

体育館に被災者がすし詰めの状態だ。

安眠できないのも無理はない。

目が覚めれば昨日までの出来事が悪夢であればいいと思っていたが、その思いも儚く散った。

紛れもない現実である事を突きつけられ、憂鬱な気分になる少女。

その鼻孔を。

「……?」

温かくも、かぐわしい香りがくすぐった。

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