ラストイニング〜重ねるイニングの行く先〜
「指は…どうって?」。

「………。神経に近い所に腫瘍があってね……。先生、努力していただいたんだけど……、小指、開く事は無理だろうって…。曲げる事は…、たぶん…いける…って…。」。

母親の涙を堪えての声が、杉山に現実を叩きつけていた。

「……もうちょっと…寝る…。」。

杉山は布団で顔を隠したかったが、左手一本ではうまくできなかった。
察した母親にかけてもらうと、声を殺して涙した。
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