━ Are You Happy ? ━

■素直じゃない


『…メシでも行く?』





蝉の声を聞きながら


髪の縺れを

指で解すことに集中してたら

そう聞かれて


首を横に振った





そーゆー関係 になったからって
気を遣われて

優しくされんのは嫌で





『…じゃぁ…どっか行く?』


きっと

家族の誰かが帰って来る時間で

私を追い出したいんだと思ったから


『帰る』





って立ち上がった





『そっか…』


ほらね


『送って………』

『いい』


『送るって…』

『いいって
じゃね…』


『あっ…あのっ…
あのさ……』

















引き止められて

イイコト言われる期待して





『ごめん…』





謝られたら





より一層


ブルー





ドアノブに手をかけたまま振り返ると


床に座った翔は逆光で

表情はよくわかんなかった





『退院祝いね』





強がりは


自分を守るため





作り笑顔は


翔に罪悪感を持たせないため





すぐに部屋を出たのは


涙を見せないため


だった


“ごめん”が


何に向けられてんのかを

自分勝手に納得した





戻れるとしたら





この日に戻りたい…





『どうして私を抱いたの』





聞けばよかった





少しだけね


後悔したよ


ほんとだよ





素直じゃなかったね


私たち



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