百もの、語り。

39.見返り美人



すごく、綺麗な人を見たんです。


その人の後ろをついつい、
つけていってしまったんです。


フラフラと、
まるで花に寄せられる虫みたいに。


それで一駅分ほどの距離を歩いた時でしょうか。

突然、男の人に声をかけられたんです。


「あいつの後ろつけて、何してるんだ」

そう言われました。


あ、この人、彼氏か何かかなって
そう思いました。

それで謝ったんですけど、
そしたら彼は、「よかった」って
何故かホッとしていたんですね。


その後に聞かれたんですよ。

「あいつの顔見たか?」って。


そういえば、見てないな。

だって、顔が思い出せないんですもん。



< 97 / 266 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop