チャリパイ14~最後のサムライ!




少しの間、走り去るチャリパイを見つめていたイベリコだったが、彼女にはいつまでもそんな感傷に浸っている余裕は無かった。


先ほどの優しい笑顔からは180度表情を変え、決死の表情で後ろから走って来るジープに向かって走って行った。


そして、ここから先は通さないとばかりに両手を左右に大きく広げ、ジープの前に立ちはだかる。


「待ちなさい!」


声を張り上げるイベリコの目の前で、二台のジープは急ブレーキをかけて止まった。


乗っている追っ手の数は合わせて十人。その中には、ブタフィ将軍本人も居合わせていた。


「ほう、これはこれはイベリコ姫直々のお出迎え、恐縮しますなぁ」


ブタフィは、イベリコの顔を見るなりそんな嫌味めいた台詞を投げ掛けた。


「出迎えている訳ではありません!
これより先を行く事は、私が許しませんよ!」


語気を強めるイベリコをからかうように、ブタフィはわざとおどけてみせる。


「おやおや、これは怖い。しかし、奴らは一体何者なんですかな?
我が軍に刃向かう反乱分子は駆逐せねばならんのですがね……」


ブタフィがチャリパイの事を口にすると、イベリコは尚更に声を張り上げた。


「あの人達はもう関係無いわ!
私がここに残ったのだから、あの四人には手出ししないでっ!」


「フン……まあいいでしょう。しょせんたった四人では、大した事は出来まい」


そう言うと、ブタフィは勝ち誇ったように胸ポケットから葉巻を取り出し口にくわえた。


こうしてイベリコは、自分が宮殿に戻る事でブタフィ軍のチャリパイへの追跡を阻止したのだった。



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