ゆびきり
「山下さん。書類書いておきましたよ。」
僕は、先輩の山下さんの机の上に書類を置いた。

置いた瞬間に、書類が3枚ヒラリと宙に舞った。


「あ。すいません。」

書類を一枚…二枚拾ったところで

「しっかりしろよ。イケメン警官。」

と声が聞こえた。


声のした方を見ると、大塚さんという、コワもての先輩が立っていた。

僕が描いていた、笑顔爽やかなスマートな警察官と言うのは実際には案外少ない。

でも、大塚さんは、ずば抜けて怖い。
見た目は、ヤクザの中に入ったら見分けがつかないくらい悪人面。
ガッチリして大きな身体。筋肉の塊だ。

僕は警察学校で初めて柔道をしたけど、大塚さんとは絶対やりたくない。

そして…
なぜか、彼に『イケメン』とか『イケメン警官』と呼ばれている。


僕は最後の一枚を拾い机に置くと、大塚さんを見た。

「名前で読んでください。」

「イケメンなんだからいいじゃねぇか。」

大塚さんが大きな声で笑うと、僕たちのやり取りを聞いていた周りの人も一緒になって笑った。

僕は恨めしい気持ちをこめて大塚さんを見る。

…この人…苦手。



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