ヒロイン 完
「嫌いだから?」



私は首を傾げながら言った。



「だから何でだよ」


「生理的に受け付けない」


「お前が人を嫌うなんて、一大事だぞ」


「何それ」



私は乾いた笑い声を上げた。



「お前ってさー、人のこと嫌いになんないじゃん?」


「そ?」


「まぁー、好きにもならないけどな」


「……」



ドキッとした……否、ギクッとした。


恭二が怖い。


他人の心を見透かすのは好き。


でも、見透かされるのは嫌い。


ちょっと気を緩め過ぎたかな。


また、しっかりと壁を積み重ねなきゃ。


大丈夫。


できる。


文化祭だったからだよ。


いつもと違う環境だったから。


大丈夫。


来週からは、いつもの私に戻ってる。


大丈夫。


私はまたドッグタグを握り締めていた。


大丈夫。
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