Love Story【番外編集】

彼が出て行くと同時に入ってきた、ひとりの男。
紛れもない私の目下のコイビトである。


「ごめん、理恵ちゃん、ひとりにして。…怒ってる、よね?」

“全然、返信なかったから”


仕事終わりに急いで来たのだろうか。
いつもは綺麗に整えられている髪が、すこし乱れている。

仕事なのだから仕方がないということくらい理解しているし(殊に彼は新入社員だから余計にそうだろう)、それに対してとやかく言うつもりはない。
でも、不機嫌になったふりをして、今みたいに分かりやすく機嫌を取られるのも悪くない。

駆け引きは男女間の醍醐味だ。


でも、今夜は。
あの子の助言通り、すこし素直で可愛い女になってみるのもいいかもしれない。


「帰ってくる、って思ってたから、待ってたのよ。今夜はやっぱり、一馬と過ごしたかったしね」

そう言って微笑むと、彼が言葉を失ったように立ちつくしている。
いつもと明らかに違う私に驚いているんだろう、無理もない。


「え、えぇ?どうしたの、なんか、理恵ちゃんが可愛いんだけど!」

「失礼ね、私はいつだって可愛いでしょ?」

また不貞腐れてみせると、“いや、いつも可愛いよ”なんてまた慌てている。
その必死な顔は可愛くて、実は私のお気に入りだってことはだれにも言わない秘密だ。


「それに、思いがけない人と意外にも楽しい時間を過ごせましたから」

だれ?男?ナンパされたの?なんて、質問攻めの彼に腕を絡め、夜の街にふたりで溶ける。




『おめでとう』と呟くと、彼がまた不思議そうに顔を覗かせる。
なんでもない、という風に首を振り。

そして、そっと彼にキスをした。








#01 深夜23時の密談

< 10 / 11 >

この作品をシェア

pagetop