桜の花びら舞う頃に
「俺は……って?」

「とぼけるなよ、さくらちゃんのことだよ!」

「ああ……」


悠希は目を細める。

さくらとの出来事を思い浮かべる。




(短時間で、色々なことがあったな……)




「さくらちゃんって……」



悠希はつぶやくように話し出した。



「さくらちゃんって、由梨に似てると思わないか?」

「そうか? 俺はわからないが……」



今まで胸に溜まっていたことを、そっと打ち明けた悠希だったが、残念ながら玲司の共感は得られなかった。



「いや、絶対似てるって!」



しかし、悠希も食い下がる。



「あの笑顔とか、雰囲気とか!」



思わず興奮し、声がうわずる。



「仕草だってそうだし、声だって……!」



悠希は、拳を握りしめた。


「なぁ、玲司……」


玲司に向き直る悠希。

しかし、その耳に聞こえてきたのは、玲司の安らかな寝息の音だった。


「こらっ、お前ーっ!」


思わず、宙に裏手でツッコミを入れる。


「ったく……眠れないんじゃなかったのかよ……」


苦笑いを浮かべ、悠希も横になった。

冷えたタオルのおかげで、頬の痛みはだいぶ落ち着いている。



「色々あったけど……充実はしていたな」



悠希はつぶやき、そっと目をとじた。



「起きたら、た~を迎えに行かないとな……」



そう言いながら、玲司を追いかけるように、悠希も夢の世界へと入っていった。









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