桜の花びら舞う頃に
「秋山 あざみさん」


「はいっ!」



拓海の隣りの席の女の子が、元気に返事をして立ち上がった。


たくさんの拍手に迎えられ、少し照れながら教壇へと上がる。


そして、手にした絵をゆっくり広げた。

ピンクのドレスを着た女の子が、舞台の上でピアノを弾いている。


「えっと……この前、ピアノの発表会が、ありました」


女の子は、少したどたどしく話し出した。

しかし、話すうちにその時の気持ちが蘇ってきたのだろう、次第に固さが抜け、とても楽しそうな表情を見せていた。






「━━━もっと練習して上手になりたいです!」



女の子は発表が終わると


「終わりです」


と言って頭を下げた。

その瞬間、拍手が巻き起こる。

女の子は、その拍手に嬉しそうな表情を見せ、自分の席へと戻っていった。


「はい、とても楽しかったこと、とてもピアノが好きなことが良く伝わりましたね」


さくらのその言葉に、女の子は再び笑顔を見せる。

何故か、隣りの拓海までニコニコしていた。







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