桜の花びら舞う頃に
第27話『やさしさに包まれたなら』
「うまーい!」



アパートの、隣りの部屋の住人にも届くのではないかという大きな声。

その言葉に、悠希とさくらは微笑みあった。


「パパ、おいひ……モグモグ……おいひーよ……モグモグ」

「おいおい……話すか食べるか、どっちかにしろよ」

「じゃ、食べるっ!」


拓海は必死の形相で、皿にかぶりつくようにしてカレーを食べ始めた。


「その食べ方だと……普段、ロクなもの食わせてないみたいじゃないか」


目の前の我が子の姿に、思わず苦笑する悠希。


「あはは、良かった、気に入ってもらえて」


隣りで必死に食べる拓海の様子に、さくらも笑みを浮かべた。


「さくらちゃん、俺たちも食べようか」

「うん!」


目の前に置かれたカレーからは、食欲をそそる香りが立ち込めている。

悠希は、ゴクリと唾を飲んだ。

カレーにスプーンを入れ、ゆっくりと口に運ぶ。



「こ、これは……」


「美味し~い!」



悠希とさくらは、思わず声を上げた。

その様子に、拓海は『ふふん』と何故か得意げに笑う。


「このカレー……すごく旨味とコクが出てる!」

「この鶏肉も凄く柔らかくて、口の中でとろけるみたい!」


2人も拓海に続き、夢中でカレーを食べ出した。


「これは……た~の気持ちが……」

「うん……わかるわ……」

「2人ともー、口にものを入れて話さないっ!」


あまりの美味しさに感動する2人に、拓海はスプーンを立て注意する。

悠希とさくらは思わず首をすくめ、顔を見合わせた。








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