桜の花びら舞う頃に
そして、こちらも5分とかからず完成を迎えた。


「はいっ、先生!」


「わぁ~、可愛い!」



絵を見たさくらの口から飛び出した言葉に、拓海は満足そうに鼻をこすった。



絵は、ニッコリ笑顔のさくらが、こちらを向いて立っているものだった。

さくらの周りには、夕食に食べたカレーも描かれている。

拓海の絵にも、見る者を温かな気持ちにさせる力が込められていた。


「た~君、上手いねぇ!」


嬉しそうな拓海。

しかし、何かに気付いたらしく、その表情を少しだけ曇らせた。


「た~、どうした?」

「うん……」


拓海は、ポツリポツリと話し出す。



「……先生が描いた絵は、僕とパパの2人だけど……」



続いて、自分の絵を見る。



「僕の絵は1人だから……先生、寂しくないかなぁ?」



その言葉に、悠希とさくらは顔を見合わせた。




(この絵に、自分と由梨を見いだしたのか……)




悠希は、拓海の頭をくしゃっとなでた。



「た~、大丈夫だよ」



悠希は、それぞれの絵をスケッチブックから切り取った。



そして、さくらの絵の左側の余白部分を折り曲げる。



同じように、拓海の絵の右側の余白部分を折り曲げた。



「ほら、こうすれば……」



悠希は、その折り曲げた側同士を合わせて並べる。



「わぁっ!」



そこには拓海を中心に寄り添って微笑む、3人の姿が描かれていた。



「悠希くん……!」


「もう、これで寂しくないだろう?」



優しく微笑む悠希。


「うん! パパ、ありがとー!!」


拓海は、悠希の胸に飛び込んでいく。


「良かったねぇ、た~君」


そう言って、さくらは拓海の頭をなでた。




そこには確かに、温かな優しさに包まれた3人の姿があった。












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