桜の花びら舞う頃に
「良かった……無事で……」


悠希は、全身から力が抜けるような感覚を覚えた。


「まったく……なんて運転してるんだ!」


車が走り去った方向を悠希はにらむ。

腕に再び力が入る。



「ゆ……悠希くん……」



ふと、自分の腕の中からする声に、悠希は目線を落とす。


そこには、頬を真っ赤に染めたさくらがいた。


一瞬、さくらのその表情が理解出来ない悠希。





しかし、次の瞬間━━━





「ご、ごめん!」



ようやく気が付いた悠希は、慌ててさくらから腕を外した。


「ううん……」


さくらは顔を赤らめたまま、無意識のうちに髪を手で整える。


悠希も顔を赤らめ、空いたその手で2、3度頭をかいた。





しばしの沈黙。





赤面したまま見つめ合う2人。




雷のようなその鼓動。





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