桜の花びら舞う頃に
「と、とにかく━━━」



このままではらちがあかないと、悠希は思い切って切り出す。



「それは、勘違いだから!」



『彼女』とは、そういう意味で言ったのではないことを丁寧に説明する。



「……わかった」



そのかいあってか、エリカは驚くほど素直に理解してくれた。


「……わかってくれたか~」


悠希は、ホッと胸をなでおろす。



「……でもね!」



エリカは一歩前に進み出て、悠希の顔を見つめた。



「アタシが……悠希を好きだって気持ちは、変わらないから!」



そう言って、エリカは微笑んだ。

果てしない疲労感が身体を襲う。

またもや気が遠くなりそうになる悠希。



(が……頑張れ俺! ……頑張れ!)



必死に自分を励ました。


「だ、だって、勘違いだったんだよ?」


そんな悠希の気持ちを汲んでか、さくらがエリカに問いかける。

その言葉に、胸に手を当てうつむくエリカ。



「勘違いだった……かもしれないけど……!」



エリカは拳を握りしめ、再び顔を上げる。



「アタシのこの気持ちは、勘違いなんかじゃない!」



悠希を見つめる瞳は真剣そのものだ。

エリカのその表情に、一瞬、心臓が高鳴る悠希。


「で、でも、玲司のことは……」

「もちろん、玲司のことも本気だったよ……」


エリカは、少しだけ遠い目をして夜空を見つめた。


「でも……今は悠希が一番!」


顔を戻したエリカは、そう言って悠希に微笑んだ。


「そんな簡単に……」


つぶやくさくらに、エリカは向き直る。



「アタシってば【千の恋を持つ女】だから!」



胸を張るエリカ。

さくらは、溜め息をつく。



「それ……そんな自慢げに言うことじゃ……ない……」


「ん~……サウザンド・ラブ?」


「英語で言ってもダメーっ!」



夜空の星々が見守る中、3人のやり取りは続いていった。







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