桜の花びら舞う頃に
帰りの車も、皆、行きと同じ席に座っている。


悠希が運転。

さくらが助手席。

拓海、玲司、麻紀は後部座席。




(今日は、楽しかったな……)




賑やかな後ろの声に、悠希は今日のことを思い出す。



拓海にせかされながら回った、数々のアトラクション。

その時の、拓海の無邪気な笑顔が印象的で、とても輝いて見えた。


今まで、自分の都合で連れて来なかったことを、悠希は後悔さえした。






そして━━━






(お化け屋敷で……さくらちゃんと手をつないだんだよな……)





暗闇の中、握りあった手。

その時の感触、そして温もりが、悠希の中によみがえる。




(さくらちゃんの手……小さかったな)




悠希は、ふと、助手席に座るさくらに目を向けた。



その瞬間、不意にさくらも悠希の方を見る。



見つめ合う2人。


思わず、悠希の顔が赤くなる。


さくらも同じことを考えていたのか、頬を赤らめて、あわててたように視線をそらした。





< 260 / 550 >

この作品をシェア

pagetop