桜の花びら舞う頃に
『悠希くん……さくらは……ずっと苦しんで……それで……やっとあなたに出逢えたの!』


「さくらちゃん……」


『過去から解き放たれて……やっと見つけた幸せなの……』



電話の向こうの麻紀は泣き声になりながらも、悠希に想いを必死に伝えようとする。



『だから……だから……』



しかし……




それも、もう限界だった。


麻紀の口からは、もはや嗚咽しか出てこない。



『……もしもし、悠希』



見かねた玲司が、麻紀から電話を奪う。



「玲司……」


『さくらちゃんがお前と出逢って、過去から解き放たれたように……』



一瞬、言葉を切る玲司。





そして……





『悠希……お前もさくらちゃんと出逢って、過去から解き放たれたんだぞ……』





玲司のその声は、悠希の心に深く染み渡る。


自然と、悠希の瞳から熱いものが、頬を伝って流れ落ちた。




「2人とも……ありがとう……」


『悠希……』




悠希は、携帯電話を強く握り締める。


そして、言葉を続けた。






「玲司……麻紀ちゃん……すまない……」










< 455 / 550 >

この作品をシェア

pagetop