桜の花びら舞う頃に

「乾杯~!」


4つのグラスが、カチャンと小気味良い音を立てて合わさる。

そして、それぞれグラスに注がれているビールに口をつける。


「あ~、やっぱりビールは美味い!」


玲司はグラスのビールを一気に飲み干した。

早くも2杯目を店員に注文している。


「お前……ちょっとペースが早くないか?」

「平気、平気」


心配する悠希だったが、玲司は気にする様子もない。


「じゃあ、初対面の人もいることだし、ここで自己紹介といこう!」


テンション高く玲司が言う。


「お約束ですね」

「少し、照れくさいのよね」


さくらと麻紀が顔を見合わせて笑う。


「じゃあ、今、笑った麻紀ちゃんから言ってみよう!」

「私!?」


突然の指名に驚く麻紀。


「頑張れー!」

「頑張って、麻紀ちゃん!」


悠希とさくらが応援する。


「う、うん」


少し照れくさそうに頬をかくと、麻紀は話し始めた。


「……え~と、織田 麻紀(おだ まき)っていいます。歳は25です。よろしくお願いしまーす!」

「え……それだけ?」

「ダメですか?」


麻紀がいたずらっ子のような笑顔を見せる。

普段は大人びた顔立ちをしている麻紀だが、笑顔は意外にも無邪気なものだった。



(玲司は、この笑顔に惹かれたのかも……な)


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