桜の花びら舞う頃に

第14話『涙のキッス』

店の外壁に寄りかかり、並んで座る悠希とさくら。


さくらの優しさに触れた悠希は、あの時のことを静かに語り出す。


あの日曜の午後のことを……






一方、フレア内の２人、玲司と麻紀。

こちらも、会話の内容は少し深いものになっていた。


「……でも、玲司くんって、あんな風に怒るんだね。ちょっと意外だった」

「……俺のことを言うなら、いいけど……」


麻紀の言葉に、玲司は苦笑した。


「悠希の奥さん━━━由梨ちゃんが亡くなって３年……」


玲司は遠い目をしながら言葉を続ける。


「俺は……アイツがどれだけ悲しんだか……どれだけ苦しんだかを知っているから……」


そこまで言うと、玲司は真面目な表情になる。


「だから、さっきのエリカの言葉は許せなかったんだ」


まっすぐ麻紀を見つめる玲司。

その瞳は、嘘偽りなどは感じられない。


「玲司くん……意外といい人だったのね」

「意外とって……」


玲司は苦笑した。


「どんなイメージを持ってたのやら……」


玲司の言葉に、麻紀は「あはは」と笑う。

しかし、すぐに真面目な表情に戻った。



「ねぇ……」


「うん？」


「悠希くん……奥さんと、どんな別れ方をしたの？」



麻紀は言葉を選びながら、玲司にたずねる。



「ああ……」



玲司は手を顔の前で組んだ。



「俺も、悠希から聞いた話なんだけど……」