桜の花びら舞う頃に
その瞬間━━━




「待てよ!」



悠希は、男の前に立ちふさがった。


「あん? 何だオマエ」

「……女の子に手を上げる気か!」


悠希は鋭い口調で男に問う。


「そいつに、世間の厳しさってやつを教えてやるのさ」


男はそう言い、下品に笑った。


「邪魔するなら……お前から修正してやるぞ!」

「タイガー! かまわないからやっちゃってよっ!」


エリカの声に、タイガーと呼ばれた男は拳を天に突き上げ答える。


「タイガーって……お前、何人だよ!」

「明らかに、日本人よねぇ」


悠希とさくらは、思わずつぶやいていた。


「だ……黙れーっ!!」


馬鹿にされたと感じたタイガーは、勢いよく悠希につかみかかる。

タイガーの伸ばした両手が悠希の体に触れる瞬間、悠希は体をクルリとひねり身をかわした。


「うおっ!?」


突然、目標物が消えたタイガーは、足がもつれて激しく地面に転がった。


「何やってるのよ!」


エリカの罵声が飛ぶ。


「く……こ……この野郎!!」


タイガーは起き上がると、悠希に再び突進してきた。


「悠希くん!」

「大丈夫、さくらちゃん。こんなヤツには負けないよ!」






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