青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
身悶えている不良を一瞥した後、俺は金属バットを握り締めているココロの下に駆け寄った。
「ケイさんっ」
糸が切れたように腕に飛び込んでくる彼女を抱擁して、「馬鹿」ナニ物騒なことしているのだとまずは叱り付ける。
無茶しようとしたことは頂けない。
次に無事でよかったと体を掻き抱く。
叱られたことに対してはむうっと膨れ面を作り、ココロは俺の胸から顔を上げて主張した。
「ケイさんピンチだったんですよ?」
無茶だってします、と不満げに鼻を鳴らしてくる。
「だ。だけどさ」
金属バットでフルスイングはないだろ、向こうの頭が本当にかち割れちまったらどうするのだと意見する。
本気で怪我させるつもりなんてなかったとココロは言い、ちょこーっと相手を脅すだけだったのだと熱弁した。
「響子さんは教えてくれましたよ。喧嘩ができないなら、脅しなり知恵を使うなり、とにかくテクニックで勝れ! と。突っ走るだけが喧嘩じゃないそうです」
―…嗚呼、得意げな顔で俺を見ないで下さい…、ココロさん。
俺は泣きたい。
切実に泣きたい。
姉分さんの助言を真に受けて(響子さんっ。余計なことを)、それを実行した健気な彼女に!
逞しくなっている証拠だども、そんな物騒な逞しさを身につけんでも宜しゅうございますよ!
どんなに彼女のおかげで隙ができて倒せたじゃないかと言われても、俺自身納得いかなかったりするわけだ。
もっとお小言を言おうとするんだけど、
「私、舎弟の彼女ですから」
の一言で俺の説教を拒んでしまう。
俺は額に手を当てた。
ったくもう、この子はいーっつもその言い訳で話を終わらせるんだから!
舎弟の彼女だからって無茶していいわけじゃないんだぞ、ココロ!
女の子なんだから暴力沙汰はなるべく控え「響子さんは参戦してますよ!」
………。
あーいえばこういう…、だよな。この状況。
俺の彼女はわりと頑固な一面があるから困ったものだ。
はいはい、俺の負けだよ。
素直に無事を喜ぶことにするって。
食い下がってくる彼女の頭を撫で、俺はお小言を止めて無事で良かったと再三再四告げる。
一変して破顔になるココロだったけど、ハッと我に返ってモトとキヨタの危機を俺に知らせる。
んでもって川瀬と谷もピンチなのだと教えてくれたために、目が点。
なーんでそこで矢島の舎弟達が…、ゲッ、まさか三人と一緒にいる成り行き居合わせた不良って。