青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―

 
予行練習でもしかたかったのか。

おどける俺にモトは機嫌を損ねることもなく、「後悔するためだよ」不可解な返答をしてきた。
 

携帯を閉じる俺は、それはまたどういう意味があっての行動で? と相手に肩を竦める。

一拍置いてモトは空を仰いだ。


「オレさ」


アンタにだけは絶対負けたくないんだよ、今も昔もこれからも。

だってアンタはヨウさんの舎弟、それはオレにとって好敵手そのもの。


仲間と同時に良きライバルだと思っている。

誰よりもケイにだけは負けたくない。


その気持ちが強いのだとモトは笑う。
 

「ヨウさんの前じゃカッコつけて決意表明したい。
やっぱ弟分として決めたいわけだ。

けど、アンタには有りの儘を見せておこうと思う。
きっとオレは明日にでも後悔するさ。
なんでよりにもよってケイに情けない姿を見せたのか! あいつはオレの好敵手っ、あいつだけには絶対見せたくない姿を見せたなんて!

…そう、後悔するだろうな」
 

すっげぇ後悔して後悔して後悔して、見返してやろうと思う自分がきっといる。
 

だから俺に見せるのだとモトは微笑んだ。

自分の力量皆無に嘆き、憤り、悔しがる情けない姿を仲間であり良き好敵手の俺に見せる。

馬鹿みたいに後悔して、前進してやるのだと得意げな顔を作った。


そう、後悔するために一番最初に俺を呼び出した。


これが最大の理由だとモトは笑声を漏らす。


「けど一つ」オレはいつだってケイに勝っていることがある。

手腕?
いや違う。

いつも勝っていること、それは。
 

「オレはケイみたいに、誰彼に一線引く。なんてしねぇんだよ。参ったか」
 

後悔しながらも弱い姿も見せられる、これはオレの自慢だ。

絶大の信頼を俺に寄せてくる後輩。

つい噴き出して、「それでこそいつものお前じゃん」俺は軽く両手を挙げて参ったポーズ。

んでもって、「好敵手ねぇ」俺っていつからそんな美味しい存在になったんだか、肩を竦めて缶を持ったまま腰を上げる。

「んだよ」一方的な好敵手じゃ寂しいぜ、変にライバル視してくるモトに俺は一笑。


「俺の中じゃお前って」

クソ生意気でご都合主義な後輩だから、と毒づく。
 

「なんだよご都合主義って」


いつオレがご都合主義になったよ、と膨れ面を作るモト。

「ゲーム話になると」

いっつもお前は俺を先輩扱いしてくるじゃないか、だからご都合主義なのだと指摘してやった。

次いで、「不良相手に」面と向かってこんなことを言うなんてな…、俺も変わったもんだと独り言を零す。

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