一途に IYOU〜背伸びのキス〜


「嫌になったなら……」
「やめない」


強く言い切ってからチラっと顔半分だけ振り向いてみる。
椋ちゃんは、眼鏡の奥の瞳を困ったように微笑ませてあたしを見ていた。


まず顔を洗って、着替え。
それから、食卓につく。

そして朝ごはんを食べ終わってコーヒーを一杯飲んだ後、ネクタイをしめて。
最後に眼鏡をコンタクトにして、部屋を出る。

それが椋ちゃんの一日の始まり方。


「今日はね、ハムエッグにしたんだよ。あと、トーストとサラダ。
コーヒーもおとしたのを水筒で持ってきたし」


テーブルの上にお皿を並べながら言うと、洗面所から戻ってきた椋ちゃんが「今日はって、いつも同じだろ」と笑う。


「咲良は卵料理ハムエッグしか作れないんだから」
「だって、椋ちゃんが好きな料理だから一番最初に覚えたんだもん。
あ、もしかして卵料理のランキング変わっちゃった? 
オムレツ? 茶碗蒸し?」








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