一途に IYOU〜背伸びのキス〜


靴を脱いで、椋ちゃんの横を通りながら言うと、椋ちゃんが驚いた顔で私を振り返る。
なんで知ってるんだって言いたそうな顔で。


「今日ね、先生に、これ以上椋ちゃんをいじめるのやめてくださいって土下座しに行ったの。
今度の企画もちゃんとやってくださいって。
そしたら先生が、私が来る前に椋ちゃんが来て、まったく同じ事していったって教えてくれた」
「……それは清水さんの俺への最後の嫌がらせだな」
「え、なんで?」
「俺の格好悪いところを咲良にバラされたから」


そう言ってリビングに向かう椋ちゃんの後ろに走り寄る。


「格好悪くなんてないよ! あたしのためにそこまでさせちゃったのは本当に申し訳ないと思ってるけど……でも嬉しかったから。
椋ちゃんは誰よりカッコいい」


ケーキを冷蔵庫に入れた椋ちゃんが、あたしを振り返って困り顔で微笑む。


< 330 / 342 >

この作品をシェア

pagetop